コロナ下で、出てきた「在宅ワーク」。その筆頭にすぐ想起されるのが、家でのパソコン操作。こればかり一日中やっているような想像もしますが・・・
そこで出てくる職業病とでもいえるのが次の話です。
上肢とは、指先から肩までのこと。そこを使うことは日常茶飯事。しかも仕事で使うことで、障害が出てくる。それが「上肢障害」というもの。手と足を使わずしてほとんど体を使えません。縫製・洗濯・運搬~等々。手を使う・指を使う・・・昨今、パソコンのキーボードを叩くことは日常茶飯事。この作業、仕事で障害が出れば、労災認定対象とされるのです。
参照:厚労省「上肢障害の労災認定」のリーフレットがわかりやすいです。
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040324-13.pdfより下記項目一部掲載
労災認定の要件
① 上肢等※に負担のかかる作業を主とする業務に相当期間従事した後に発症したものであること。※上肢等とは、後頭部、頸部、肩甲帯、上腕、前腕、手、指をいいます。
② 発症前に過重な業務に就労したこと。
③ 過重な業務への就労と発症までの経過が医学上妥当なものと認められること。
及び、厚労省「上肢作業に基づく疾病の業務上外の認定基準について」(平成9年2月3日)
(基発第65号)(都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長通知)という通達があります。
仕事上の障害だから当然と言えば当然の範疇とも思えますが、案外「これは労災?」と思うことかもしれません。要は、どのような障害でも、それが認定要件に合致するかしないかですが・・・障害が発生した時は、その原因がどこからであり、長期的であるかなどを疑って放置しないことです。ほかの病気が出てきても、原因が労働上のものであるかもしれません。家系だからだとか、年だからだとかで、放置しないことです。
ただ、職業病※1として認識されやすいものとしても、他にもよくあるのが、工事現場で使っている振動工具を使っての長時間作業からくる障害例。相当認められそう想像しますが、この中には、軽度であり、加齢からくるとして認められなかったという判例もあることも注視すべきところでしょう。
労働基準法規則35条別表1-2の3号3,4には、
3 さく岩機、鋲(びょう)打ち機、チェーンソー等の機械器具の使用により身体に振動を与える業務による手指、前腕等の末梢(しょう)循環障害、末梢(しょう)神経障害又は運動器障害
4 せん孔、印書、電話交換又は速記の業務、金銭登録機を使用する業務、引金付き工具を使用する業務その他上肢(し)に過度の負担のかかる業務による手指の痙攣(けいれん)、手指、前腕等の腱(けん)、腱鞘(けんしょう)若しくは腱(けん)周囲の炎症又は頸(けい)肩腕症候群
とあります。
・上記でもある如く、工事や工場においての障害は、証明力が得やすくもあるでしょうが、それに比べ、パソコン操作上の障害の場合、やはり、その証明力です。それを証明するのに見るからに労災対象になるといえるほどの症状を、証明できるかどうかです。しかも、たいていは、これは、労災対象というにおこがましく思えてきやすい場合でしょう。
労災要件をクリアーしているかどうかという点と、クリアーしているのがはっきりしていても、本人自身の意識如何によるところが大きいのです。
そして、やはり、労災要件に合致していても、それが必ず認定されるとはいいがたい点です。認定は、人の裁量と言えることもある点です。
※1 職業病:「業務上」という要件を定義するには、業務を起因とする遂行性が基本とされるなかで、その業務の事故などの起因性から発生する「事故性傷病」と業務の有害要因から発生とする傷病である「非事故性の傷病」に分けられる。後者を「職業病」という。いずれも、その起因性と因果関係が問題視される。
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