「書類承継」というような言葉はありませんが、ここでは、事業承継時に伴う書類の継続を、あえて「書類承継」と言ってみました。
〇事業承継を行う場合、改めて事業関係書類の届け出も行う必要がある=書類の自動承継はない
例えば、建設業を行う親から、事業をそのまま承継する際には、親が、建設業許可を取得している場合、
①「建設業許可の承継」
建設業許可の承継は、かつてはできませんでしたが、令和2年10日1日から、「建設業法と入契法の一括改正」により、事業譲渡・合併・分割・相続ができるようになりました。かつては承継に際しては、改めて新規に許可申請をする必要がありました。この時は相続人が、前の「廃業届」を出して、許可が失効したことを許可行政庁(国または県)に届けるものでした。
しかし、これでは、新規申請時、許可が下りるまで(国の場合=約4か月、県の場合=1,2か月)の間に、許可の空白ができます。つまり、この期間に建設業務(500万円以上)を行えば無許可で行うことになります。それを改定しました。
改正法(17条の3、17条2の7)では、
17条3-1 被相続人が死亡した時、被相続人が死亡後30日以内に、相続人が「認可」を申請します。
17条3-2 認可の申請後は、被相続人死亡日から認可を受ける日までは、被相続人の建設業許可は、相続人に対してした(許可)とみなされる。
17条3-4 許可を受けた相続人は、建設業者としての地位を承継する。
17条2-7 許可の有効期間(5年間)は、承継の日の翌日から改めて起算する。
②青色申告の承継
しかも、親は青色申告を申請して、個人事業を行っていた場合、その子供が、そのまま事業を受け継いでも、青色申告の承認申請は、再度しなければなりません。
それは、親自身のみが受けているのであるからです。それを行わないまま事業を継続した場合、相続が始まれば、事業上の純損失が出た場合、それを翌年に繰り越すことはできなくなり(「純損失の繰越控除」というもの)※1
法人の場合も、青色申告をしていれば「欠損金の繰越控除」として、翌年以降「欠損金」として繰り越せます。
その他、被相続人の各種廃業届は、相続人がしますし、飲食業・商品販売など特にですが、消費税、所得税や簡易課税制度選択届など(どれも提出期限がある)もあります。
まとめ
・事業を承継しても、そのまま承継するのではないということから、すべてに、注意して情報を得ることが必要です。そのためにも、役所や専門家とのつながりもあるべきだということです。①は、行政書士、②は税理士が扱いますし、それら専門家にかかっているならば、当然教えてくれている範疇の事項です。
※1:個人事業主の場合、青色申告を申請していれば、その年に生じた損失は、翌年以降3年間繰り越せる。つまり、将来利益が出た場合、それと相殺ができるのです。簡単に言えば、利益と相殺して利益が少なくなり、税金も減るということ。
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