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「風土」和辻哲郎著 📖

ご存知の古典的名著「風土」です。その一部をかいつまんで説明します。下記のことだけでも、この書を読むことの意義がわかるでしょう。
風土が人間・文化・産業にどれほど影響するかを読めます。


日本が明治期「牛鍋」にあるような牛を食べる習慣がなかった理由の一つを説明するにふさわしい説明がなされています。
日本人がそもそも、牛肉を食す文化がなかったのは、地理的環境が多くを示すとも言えます。
つまり、日本はご存知の如く周りを海に囲まれた島国です。
しかも、太平洋は黒潮と親潮がまみえますし、日本海は、対馬海流とリマン海流がまみえます。
世界3大漁場のひとつでもあります。
この黒潮は、豊富な魚や生物が流れてきます。
それゆえ、それを取る漁師数や漁船数も昔から、世界中の総数以上だと言われるほどの数を持っていると言われます。


それに比べ、西洋に見る地中海では、そのような魚をはじめとした海藻類・微生物などをはじめとして、海の生き物の量が極端に少ないというのです。
さすれば、当然そこに、海の食糧獲得業が発達するわけがありません。
日本の海が豊かな漁場を持つ海であるのに対して、地中海は、一部を除いては、海の生き物に乏しい、やせた海であるといいます。
また、西洋は日本とは異なる「牧場」が多い点です。
かの地は、夏は乾燥しているので、山にも木々は育たないが、湿潤な冬には、岩山でも、日本と違い、柔らかい緑の草が生えると言います。
この夏と冬の気候が、雑草ではなく牧草をはぐくむのだそうです。
麦畑後に生えるレンゲソウでもその種類が多いし、その草原が豊かであるので、羊や牛を飼うには適しているわけです。


日本の農業では、雑草むしりにも精を出さねばならないなど、農業も西洋とは違いこまめな作業が必要となってくる。
それに比べ、西洋では、その草取りも少なく、虫も少なくといった様相。
そして、温暖な気候で果樹園、ワイン・オリーブなども発達する農業事情は、あくせくしなくてもよい風土であると言います。
ゆえにそこに、人間の几帳面さとのどかに過ごせる風土の中での性格に違いも出てくるとあります。※1


和辻哲郎著は、誰もが読むべき古典のひとつです。

兎角人は、現代流行の本を手に取りますが、本来は、まず古典と言われるものを読むべきです。人類の歴史の中で、人の英知を積み重ねてきた文化の集積の中から生まれてきた知識の宝庫です。

それを何一つ読まずして、現代書ばかりに翻弄されるのは、本末転倒です。

勿論、時代を反映する現代書は、読む必要があります。しかし、多くの事象に起こる問題解決の基礎は、古典から学ぶことが多いものです。

それらを知ることで、現代社会の問題や行き先を志向する糧にすべき点が多く見つかるはずです。

古典というのは、何も古いというだけのことを差すのではありません。現代でも古典と言える書は出てきます。即ち、それは、多くの情報知識経験から選りすぐられた集積からなるものなので、内容が高度であるのです。

又芸術的にも、研ぎ澄まされた挙句の上での表現がされているので、時として、難しすぎるとも言われます。

ですから、本というものは、古典を読みつつ、現代書にあたるほうが有意義な読み方になるでしょう。


その意味においても、地理学・歴史学、民族学など社会科学全般を学習する際には、和辻哲郎の「風土」は、とてもいい基本書であり参考書となります。

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※1このことは、地理的条件・気候条件の違いなどからくる「風土」の比較説明を、和辻哲郎「風土」(岩波書店)に詳しく書いてあります。

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