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言文一致運動と法令の文字

❒言文一致運動 ~カタカナ混じりの文語体から、ひらがな混じりの口語体へ~

言文一致、すなわち、明治までは、口語文と書面上の文語文とでは異なる様式を持っていました。言文一致運動は、それまでの、文語を廃止し、すべて口語化する運動が文学の中から起こった運動で、二葉亭四迷や夏目漱石らをはじめとして、明治10年代から起きてきたといいます。近代化の波の中で当然でてきた問題とも言えます。

これは、近代に入り文学界では、西洋文学が翻訳・披露されることと、坪内逍遥や二葉亭四迷らの写実主義をとりいれた文学表現により現実を描写する文学へと移行していくところによります。

たとえば、口語体の「~だ」「~である」「~です」調の文体は、二葉亭四迷「浮雲」、夏目漱石「吾輩は猫である」などにも現れ、明治40年代には言文一致化がなされます。


又、

1900(明治33年3月)には、帝国教育会*内においては「言文一致会」が設立。
1926(大正5年6月)「法令型式ノ改善二関スル件」を公布。
1949(昭和24年9月)文部省が公文書の書式を左横書きに実施
等、幾度となく、国語審議会や法制審議会などにおいて文体の編製が審議研究されて変遷していきます。

本来、法律用語が難しいのは洋の東西を問わず同じ趣旨の基で作られてきています。つまり、国が作った法律を容易に国民に理解させては国の威信にかかわるという思考がはびこっていましたから。


*帝国教育会:教師やその関係者の組織団体で、当時大きな役割をしたが、後に、今の日教組成立後には解散したとのこと。


❒漢字を読みやすくするカタカナ

・漢字が中国から渡ってきて、日本も縦書きを採用してきましたが、なぜ右から左へ書くのかという理由は明確にされていないという事です。世界には、漢字だけでなく、アラビア文字も右から左へ、横書きで、書きます。
 現代では横書きが多くなりましたが、横書きと縦書きについては、人の顔の中で目が横に並んでいるので、横書きが良いとも言われます。日本語が縦書きを文学・法令・新聞などでは今も採用されていますが、縦書きのメリットとしては精読に都合がよいとされています。逆に横書きは、スラスラと早く読むのに適していると言われています。

・なぜ、戦前はカタカナ混じりの漢字文ばかりであったのか。
それは、小学校で初めに教えるのが、カタカナだったそうですが、そもそも、中国から漢字が入ってきても、漢字を読み書きするに際して難しく、叉話し言葉と同調させるには、漢字自身の読み方に工夫が必要でした。そこで、漢字文に句読点や返り点を入れたりします。

また、漢字を解体してカタカナが誕生しますが、ひらがなより、カタカナの方が学びやすかったとも言います。

戦前の小学校でも、従来からのカタカナ混じりの漢字入り国語文が習慣化されます。しかも、外国文化の流入が多くなるにつれ一層カタカナが、使われることにもなるのです。


❒法律条文における口語化は最近のこと

ところが、法律の口語文化がされたのはつい最近のことであることからすると、いかに日本の法律は、遅れているのかという感がするのはやむを得ないでしょう。
なにせカタカナ混じりの文語文では、読みにくいことこの上ないのですから。ただでさえ難解な法律用語が、カタカナ混じりで書いてあるのです。
今だに法律出版社においては、過去の古典的名著などは旧字漢字だらけのままで復刊しているのを見かけますが、その意味があるのかとも思えます。勿論現代語訳に直すことで本来の意味が変わってしまうことを恐れるといった懸念もありましょうが。

刑法 平成7年 表記の平易化
民法 平成16年 1編~3編 ~平成17年  民法現代語化、民法口語化という。
商法 平成31年
民訴 平成8年
刑訴 昭和23年


もっと有名なところでは、1945年8月5日の天皇の終戦放送、いわゆる「玉音放送」です。
誰もが今と違う音声が聞きにくいラジオである上に、その場では、天皇の言葉をほとんどの国民には分からなかったことは、その後に多く作られた映画などでもよく取り上げられえるシーンです。
だから当時、日本が戦争に負けたという事をすぐわかる人は、高等教育を受けている人ばかりで、近くにいたそのような人が言うことを聞いて分かったというのです。
新日本国憲法は、初めからひらがな交じりの文語体で書かれていますが、これとて、ところどころには、旧字があるのを散見します。たとえば、憲法序文においても、「やうにする」・「思ふ」・「行ふ」・「務めてゐる」・「誓ふ」などはそのままです。(歴史かな)
因みに、皆さんが憲法を開いて読んでみるとおわかりです。今の教育漢字とは違うひらがながそこここに見られますので、チェックしてみてください。


表記の平易化

分かりやすくをモットーに変革がなされていきました。しかし、遅れているというよりは、法文である以上容易に変更できないのはありますし、用語自体が誤解や偏見など解釈に間違いがあってはならないのは基本です。もちろんそうであっても、多くの点で学者の意見が分かれてしまう点は、憲法9条の解釈をはじめとして、随所に見られます。

旧法においては、各法令には見出しもなかったのです。今や、法令も増えるばかりで、条文の書き方・構成の仕方が統一されてきたというのです。



参照:日本文学史、日本語表記についての各文献

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