2025.3.24 当時、静岡地裁は、袴田さんに刑事補償額2億1700万円を交付決定したニュースが流れました。
裁判長は再審で無罪判決を出した時の同じ国井恒志裁判長。
この額は、過去最大額と。
身体拘束期間は47年7カ月にわたり、1日当たりの補償は上限額の1万2500円
精神的身体的苦痛は極めて甚大、捜査機関による捏造を裏付ける、警察・検察に故意があると結論づけた。との事。
ところが、今般袴田さんの弁護団は、9月に起こす訴訟で、県と国とに国家賠償約6億円の国家賠償請求を求める検討、だと言う事が8月18日分かったとニュースが流された。日にちは、9月26日に訴えを提起すると言う。
更に、先般控訴断念した時の検事総長であった異例の公表談話「(証拠捏造を認めた静岡地裁に対して)捏造と断じたことに強い不満を抱かざるを得ない」と袴田さんを犯人視したとして、それについても、名誉毀損として国に対し、約500万円の訴訟を9月11日に起こす、とのことです。
刑事補償法の各条項を見てみましょう
(補償の内容)
第四条 抑留又は拘禁による補償においては、前条及び次条第二項に規定する場合を除いては、その日数に応じて、一日千円以上一万二千五百円以下の割合による額の補償金を交付する。懲役、禁錮若しくは拘留の執行又は拘置による補償においても、同様である。
2 裁判所は、前項の補償金の額を定めるには、拘束の種類及びその期間の長短、本人が受けた財産上の損失、得るはずであつた利益の喪失、精神上の苦痛及び身体上の損傷並びに警察、検察及び裁判の各機関の故意過失の有無その他一切の事情を考慮しなければならない。
3 死刑の執行による補償においては、三千万円以内で裁判所の相当と認める額の補償金を交付する。ただし、本人の死亡によつて生じた財産上の損失額が証明された場合には、補償金の額は、その損失額に三千万円を加算した額の範囲内とする。
4 裁判所は、前項の補償金の額を定めるには、同項但書の証明された損失額の外、本人の年齢、健康状態、収入能力その他の事情を考慮しなければならない。
5 罰金又は科料の執行による補償においては、既に徴収した罰金又は科料の額に、これに対する徴収の日の翌日から補償の決定の日までの期間に応じ徴収の日の翌日の法定利率による金額を加算した額に等しい補償金を交付する。労役場留置の執行をしたときは、第一項の規定を準用する。
6 没収の執行による補償においては、没収物がまだ処分されていないときは、その物を返付し、既に処分されているときは、その物の時価に等しい額の補償金を交付し、また、徴収した追徴金についてはその額にこれに対する徴収の日の翌日から補償の決定の日までの期間に応じ徴収の日の翌日の法定利率による金額を加算した額に等しい補償金を交付する。
(管轄裁判所)
第六条 補償の請求は、無罪の裁判をした裁判所に対してしなければならない。
(補償請求の期間)
第七条 補償の請求は、無罪の裁判が確定した日から三年以内にしなければならない。
(補償又は請求棄却の決定)
第十六条 補償の請求が理由のあるときは、補償の決定をしなければならない。理由がないときは、請求を棄却する決定をしなければならない。
(補償決定の公示)
第二十四条 裁判所は、補償の決定が確定したときは、その決定を受けた者の申立により、すみやかに決定の要旨を、官報及び申立人の選択する三種以内の新聞紙に各一回以上掲載して公示しなければならない。
2 前項の申立は、補償の決定が確定した後二箇月以内にしなければならない。
3 第一項の公示があつたときは、さらに同項の申立をすることはできない。
4 前三項の規定は、第五条第二項前段に規定する理由による補償の請求を棄却する決定が確定した場合に準用する。※1
先回の国の決定が決定額2億1700万円でも過去最高額と言っていたが、今回はもっと多い、本当に過去最高額となる。
が、前回の保証額提示における時の多くの批判は、こうです。
「これで人一人の人生への償いになる額と言えるのか。5億10億貰っても、償いなどにならない。もっともっと多額であっても補償額を提示すること自体がどこか空しい。」と。
「以前、静岡県警本部長や静岡地検トップが袴田さんに直接謝罪に来た。当然だが、珍しいと言うだけにすぎない。土下座したわけでもない。当時の関係者でもない。そもそも、免罪に貶めた当時の警察側の責任が法律上規定もない。」
とも言われます。
このように、免罪者を作ってしまったこと、同時に真犯人を捕まえていないこと。つまり真実が闇に葬られてしまった。警察や司法側の面子だけが何時まで経っても横行するとの批判は、そのまま世間に流布されているのをネット上でも何度となく見受けます。
●3月24日の決定は、非常に正常な裁判機能を果たしている判決で刑事補償がなされているものだと思いましたが、今度のニュースは、更に飛びぬけた金額で驚きです。
さて、「刑事補償法」がなぜ「刑事賠償法」と言わないのでしょうか。
補償は、適法な行為によって生じた損害に対して填補するものであるのに対して、賠償は、違法な行為によって生じた損害に対して填補するものです。両者の違いは。原因に違法があるかないかと言う違法性にあります。つまり、違法性があった時の補填は、団藤博士の言う様に、「刑事補償は~無過失損害賠償であることです。補償といっても賠償と同義に解しなければならない」※2のです。
しかし,同義に解しても、制限が決まっていればそれ以上は出さないわけでしょう。そこで国家賠償に切り替えるとなったのでは。「日額幾らで、それに年数かけて」だけの判断では・・・
刑事補償2億1700万円では償われない。「弁護士『国家賠償を起こすしかない。』」そして、検事総長への名誉棄損に対する国家賠償が付け加えられているが、当時の批判の的となる言葉が表に正されることとなるようです。
※1赤線は弊所記入
※2:「刑事訴訟法」団藤重光(創文社)P684
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