ネット上で嘘や、いじめなどがいとまなく投稿されるネット社会に有って、この本は今時読む本としてはそのままのタイトルです。
この本が心理学の本であることはタイトルからして誰でもわかるところですが、果たして現今の心理学として必要かどうかととらえれば、全くデマのリアルな世界の中で生きている以上、分析本などなくても良いといわずにおれません。
近世において、言論の自由・報道の自由・思想信条の自由が民主主義世界の根本思想として脈打ってきたことは周知の事実であり、各国の憲法にも書かれてきたのです。
そのような中で、これらをラジオ・テレビ・新聞を始めマスメディアを通して、人の心に訴えてきましたが、そこには嘘も一所に萌芽繫殖していきます。人が人である以上、決してこの世からなくならないものの1つが、この「デマ」です。要は、ほとんど「人と人の心の中にあるボタンの掛け違い」に起因すると言って過言ではなく、相手への尊敬と思いやりの無さの蓄積にすぎないのです。
そして、逆説的に見れば、デマを学問として捉えんとする中で、その分析的効果はどれくらいあるのかと端から疑ってしまうのが関の山のような気もします。
ところで、社会学的現象を分析する時には、誰かが何かを発すると言う行動においては、たとえその人が正しくない事やウソを言っているとしても、多い少ないにかかわらず、相手がある以上それを肯定・否定することはジョークでもない限り、誰しもがとる状況ですし、言っていること自体を正当化していると分析するでしょう。
著者はこの本の中でこう言っています。
「混乱した状況にもっともらしい理由を与えようと努力するにはそれ自体デマの1つの動機のひとつになっている。」
又、デマにある「投射」と言う分析の中の「補償的投射」と言うものでは、「~もっともらしい説明を、他人の想定された行動のうちに見出そうとするものである」と。
それに、著者はデマの歴史として古代ローマには、「デマの番人」と言う役目を持つ人がいたことも上げています。
、この本には、デマを誇張・伝説・ユーモア・同期付け・法則性など多くの視点から分析している面白さが詰まっています。
心理学という医学系分野である故、色々の点からの分析は、感情論的分析とも思えるものの科学的な分析として納得させられる以上の面白さがそこにもあります。
※「デマの心理学」オルポート他著(岩波現代叢書)
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