この種の本が好きなので、いずれ読むだろうということで買った本であるのですが、一度も読んでいません。いわゆる積読のままで、その本の背文字をたまにチラ見していただけで長年を過ごしてきたのでした。
今回これを読んでみて、その文章の構成の仕方にとても読みやすく、読者をひきつける症例を上げ乍ら、文章を構成しているのは、いかにもの書きに慣れているかが感じられます。
つまり、内容が面白いのです。
書かれている症例。否、実例犯罪の其々は、只の興味本位だけで置いてはいけない事例ばかりなので、「おもしろい」という表現はかえって事例の酷さを感覚的にも宙に投げるかのごとくに無にしていて、非常識だと人によって受けと取られる向きがあるもので良くないわけですが。
さてこの本の中に出てくる事件例は、有名事件もあり、多くの人の知る所でしょう
それらを上げてみます。
・小平義雄
・栗原源蔵
・都井睦雄
・静岡缶ビール詐取事件
・八海事件
・弘前大学教授夫人事件
・ジキルとハイド
・黒田清隆妻殺し事件
・草加次郎連続爆破事件
・新宿バス放火事件
・深圳通り魔事件
などがでてきます。
犯罪精神分析学問上、原因動機説を大きく分けると、①素因説 ➁環境説 ③両方の側面があります。
これらを取り上げながら、精神的な構造とのつながりで人の犯罪性を訴因にあるのか環境にあるのか、叉両方なのかを説明しています。いわば、犯罪心理学入門と言うタッチで描かれているので、分かりやすく思えるのもあるでしょうか。
ところで、性格と言うものは、生まれ持った性格によって受け面が強く影響強く影響するものですが、成人になると、兎角世間としては、「そんな大きくなって、今のままで良いわけがない、もっと大人になれ」など言われます。
言い換えれば、今までがどうであれ、大人になったのだから、もっとしっかりやれということです。たとえ、今までの氏素性や環境が悪くてそうなったとしても、要は、世の中自分がすべてである以上、物事判断・運命を切り開いていくんものだと戒められます。
それが、人生の生き方の大切な考え方なのですが、それができない点に一番の人生を変えてしまう方向性の発芽がいつもまにか植え付けられていくのでしょう。同時に、世の大人が、彼らの支えになってくれることが必要なのですが、誰もが、その支えになってやれることも中々難しくもあり、無いままに人の人生の時間が流れてしまう点が日常だということでしょう。
犯罪は、どこにでも雑草のようにはびこる目を持っていてそれをいつ摘むかによるのが、少しでも、犯罪をなくす手立てになることは正しい判断と行動でしょうが、所詮は、すべて個人の生き方に任せるしかないのが普通なのでしょう。
※「犯罪の心理学」中村希朗著(講談社ブルーバックス)
※参照文献:「日本の精神鑑定」(みすず書房)=大著であり、読みこなすには時間が掛かる
:「精神鑑定と犯罪心理」グルーレ(金剛出版)=この界隈では必読の名著とある
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