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「ハゲはセクハラである」という裁判

ご存知かもしれませんが、2022.5.13 英国労働裁判所(※1)において、「ハゲはセクハラである」という裁判が有ったと言います。

珍しい裁判というよりは、対象が対象だけに、誰もが注目しやすいでしょう。(失礼ながら必ずや、珍しいとか面白い裁判として歴史上に残るでしょう。)

これは、日本では起こりえないでしょうし※2、西洋の言論の自由感覚や、昨今のセクハラ問題の浮上に列記しているひとつであり、西欧諸国ならではの国民性の成せるところではないでしょうか。


抑々【はげ】の定義が、「病気・裂傷・身体的老化等により、頭部の髪の毛が無くなる事」とあります。大概は、年齢によるもので、後はがんや他の病気によるはげという病的なものも有ります。

この裁判での被害者は、年齢的なはげに対しての様であり、その他の理由ではないようです。

それに対してでも、セクハラだと言うのが英国裁判所の判断というわけでしょう。

これはこのまま世界中で特に意識されれば、誰かに【はげ❢】と罵倒したりすると、裁判沙汰になると言う認識がなされるかもしれません。

ただし、その他の理由によるはげならば、それを非難された時は、セクハラというよりは、傷害罪・名誉棄損罪の方が適当ではないでしょうか。

つまりは、裁判をたとえ日本でも起こされた時も、誹謗中傷による言動として、名誉棄損罪又は、侮辱罪とかになるかも。

(ついでながら、「もし、この事が世界中に広まり議論が起こった時は、へたにお笑い番組でもはげよばわりの演技は縮小ブームになるかも」とは考えすぎでしょうか。いじめはお笑い番組と雖も、あってはいけないテーマとも考えることが有ってもいいかもしれません。特に、子供はそんないじめを主体にしたお笑い番組を見れば、ただ面白いだけの思いで、人をいじめやすいことは、想像に難くありません。)



アメリカのイエール大学のとある法学教授は、この判断に反対していると言います。


※1英国労働裁判所:日本にはないのですが、ドイツ・フランスなどにもあると言います。労働問題の民事事件についての裁判所。名称は、「労働裁判所」「労働審判所」「雇用裁判所」等と色々。(ドイツ=Arbeitsgericht. フランス=conseil des prud'hommes. ) 

日本も、憲法裁判所の設置なども問われることがあるのですが、労働裁判所の設置は言われたことはないのではないでしょうか。つまり、日本では、特別な裁判所は憲法上作る事が出来ないとされるのです。(憲法76条2項前段「特別裁判所は、これを設置することができない」。「労働裁判所」なる言葉の定義を載せた法律辞典が少ない。)

ただ、日本でも、これと同等とされるところの制度として、平成16年に「労働審判法」(労働審判制度)が制定され、地裁での裁定がなされることとなりました。
ちなみに、ドイツで生まれたとする「労働裁判所」については、ラートブルフ著作集3「法学入門」第5章P141(東京大学出版会)にその成立背景をのべています。
其処では、「経済法と労働法」は、従来の公法私法の範疇にない新しい領域であり、それが発生してくる社会というのは、経済活動が、個人間の直接的な公共的妥協利益の取得のみでなく、公共性ある経済利益の発芽が有ってこそ生まれてくるとあります。(つまり、公共性がある経済社会であるかそうでないか)
日本でも、経済法・労働法が学問として確固たる地位を占めて来るのは、左程古くない(とりわけ、労働基準法などが制定されたのは、昭和20年・21年))のですから、その意味では、ドイツなどと比べても、上記発芽が早いとは言えないのではないでしょうか。(=いいかえれば、労働者の権利が日本社会に浸透してくるのは、真新しい)


※2日本人の感覚:: 

この裁判でも注目されているのが,「はげ呼ばわりも、セクハラか」という点ですが、はげというのは、老化の1つ・男性ホルモン減少の1つであり、ほとんどの人が成るものです。 個人的遺伝的な特徴でしょう。

勿論言われていい気がしませんし、時として怒りたくもなるでしょうが、非差別的言動とまでに昇華していませんし、これをあえて、セクハラ的に見るよりは、日常茶飯事の単なる揶揄・罵倒としてぐらいにしかとらえない点にあると思います。

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