●先に提示しました本「日本の法学者」は、学者たちを連ねていました。
この度のこれは、明治大正昭和に生きた、法曹家たちを連ねています。
検事・弁護士・学者・刑務官など、まさに、法曹関係者で、法実務の中枢にいた人たちの話です。有名事件に立ち会っています。
※「法曹」
言わば、、事件史・裁判史の裏話と言うような感じです。
タイトル「風雲録」が咲き示すように、裏話故に波乱万丈に飛んでいるとも言えます。
でも、私事ですが、この中で、その名を知る人と言えば、2,3人を置いて知らぬ人ばかりです。「小野清一郎」「正木亮」ぐらいでしょうか。
●「小野清一郎」は、東大教授(刑法・刑事訴訟法)でもあった学者ですので、その著「犯罪構成要件の理論」にて、その名を知っていました。
かつては、有斐閣の学術選書のひとつであったものでしたが、古本屋でもあるかどうかです。
「正木亮」は、刑務官も務めた、刑法学者でもあった人ですが、刑事政策のその技量を示した大家です。
その著「刑法と刑事政策」はよく知られていましたし、何度も手にしました。
先の先の最高裁判官でも有った団藤重光と同じく死刑廃止論者でした。(刑法紀行・死刑廃止論<創文社>)
彼は、研究の為の囚人経験も持つ程に、監獄学・予防法学にも秀でていたようです。
囚人経験とは、映画・ドラマで似たようなテーマがありましたが、まさにそれです。
ドラマでは、実際に囚人化されてしまったのですが。彼は、囚人でないことがすぐばれたと言います。そんな偽装囚人と言うことが出来るのか?と思いますが。
滝川幸辰らと同じ刑法学者ですが、小野清一郎らとも同じ立場であったようです。
刑事学(犯罪学)は、社会科学的にそのすそ野を広めていくことは当然の成り行きですが、小野清一郎の様に、最後には、「法とは何か?」を考えていく中、全ては人間科学であると行き着きます。人間学そのものを取り入れることの必要性も説きます。
やはり、「人を裁く」事に重きを置く刑法に、その裁きの重さを感じいるからでしょう。
正木も最後の章立てに「死刑廃止論」を説きますが、それは、後の考えではなく、初めからそれをめざしての事だと言います。
兎角、昨今の週刊誌ネタではありませんが、裏話ともなると、誰もが気にかかる所ではあります。
※「法窓風雲録 上・下」野村正男著 (朝日新聞社)
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