誰もがよく知るところの福沢諭吉「学問のすすめ」になぞらえて、「判例読書のすすめ」と言うのをご提案いたします。
と言っても、原本である判例集ではありません。
大きな書店で有れば「憲法判例集」とか「離婚判例」等と言うタイトルが付された一般読者も読めることを前提にしている本の事です。
法曹家※(裁判官・弁護士・検察官・準法曹家の司法書士・弁理士)や法制関係の人は、判例にも日夜関わっているわけですが、弁護士以外の士業は, 弁護士ほどに判例集はなじみがないかもしれません。訴訟に関わる関わらないと言う違いでしょうか。(司法書士は、訴訟に関わる面があります)
ましてや、一般の方には判例と言うと何か小難しそうで、関係ないと思われることでしょう。
昨今の裁判例について書かれているものの多くは、最近の事例が多いですし、著者自身も、若かったりします。
もちろん、裁判所判決そのままの文章は、条文など淡々と取り込んで構成されたものであり、裁判の成り行きの事実解説だけの様なものです。
判例解説本の多くは、弁護士や学者、関係団体の人たちによるものです。
一般の方が、判例集その物を読まなくても(簡単に探せない)、弁護士らが解説を加えた本は、ずっと面白く、読みやすいでしょう。
その内容への個人見解の是非はともかく、●読んで楽しく●勉強にもなる●多くの常識は常識として通らない等についての思いを得られます。
明治大正昭和等の事件判例は、法律その物や解説も、カタカナ体・文語体であったりするために、ものすごく読み辛く、理解しにくいのも多いです。
しかも、昔からよく言われるように、法律用語その物が、一般にはなじみにくく、かつ抽象的で難解な為、いくら法律辞典と照らし合わせながら読んでも、ちんぷんかんぷんであることが多いのは否めません。※2
じっくり、細かく読むのではなく、ザックリと読み進めばいいのです。
とりわけ初めての人が、関心が向きやすいのは・・・
・離婚判例、相続判例、でしょうか。税金の裁判例も興味深いものですが、税務家や法曹家の解説本は少ないようです。
これら多くの本は、1事件に付き2,3ページ解説で構成されているので、読み切りしやすく、どの事件=どのページからでも、読みはじめれます。事典的に読めますので、飽きたら止め易いです。
とは言え、週刊誌の裏話的なことでもあったりするので、初めから、毛嫌いする必要はありません。※3
その後、判例自身に興味が湧けば、「判例の読み方」と言う本も有りますので、そちらも覗いてみるのがいいでしょう。それは、もう素人ではなく、法曹の実務家や法学徒の世界に立ち入ることです。
ちなみに、日本は英米法に見られるような判例法国家ではなく、成文法国家です。
ただ、判例法と言う法はないのですが、今は、判例自体が、法の根幹のひとつになっています。
また、法源、つまり、裁判官の判断基準になるものが判例である国は、判例が法源となります。
故に、一つの先例が拘束性を持つことは、次の同種の裁判に影響すること大となります。
社会主義国家である中国の様な判例を原則法源としない国もあると言います。
判例を読むというよりは、学習するということは、法律の実務に役立つ例を多く見聞することにもある点です。それにより、考え方を知り、解釈の仕方を知り、法知識の記憶にも役立つだつことです。いいかえれば、もちろん、数少ない判例を学習するだけで、見識が広がるわけではありません。そのためには、多くの事例にあたる必要があります。特に新しく重要な判例です。それにはまずそれを探すことから始めねばなりませんが。
※➡「法曹」
・「判例百選」「〇〇法の判例」ジュリストなど。有斐閣出版が取得しやすい。
・「判例時報」は、判例時報社出版物。これも法曹家や法学徒も手にする。
・裁判所のHPの判例検索ページ
※2 フランスでは、難しい法律専門用語もありますが、法律用語は一般生活になじみやすい言葉が多いとされています。それは、法典の編纂時に、学者ではなく、法律の実務家が携わっていたからだと言います。まあ、それでも昨今の様に社会が複雑化してくると、抽象的な言葉が多くなるのはいないめないとも言われます。
※3 注意点:
書を繙くことは、勉強・研究・趣味等の目的がありますが、それは、賢明で幸せな人生を送るための処方箋のひとつでもあります。
裏話的要素もあるからと言って、「人の不幸は蜜の味」と思う人は、絶対読むのは、やめて下さい。
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