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遺言相続の話10「1円でもやりたくない=相続人の廃除」

相続人が10人いれば10人の意見・感情・性格・生活信条があります。
家族全員がいつまでもうまくいくとは限りません。
ましてや、いつか「被相続人となる父や母又は家族に対して、散々なる暴言・暴力・浪費など虐待や侮辱があるので、遺産はおろか遺留分も渡したくない時はどうするか」・・・です。

世間には、家庭内暴力と言うのは、ゴマンとありますが、多くは、世間体があるので、表に出てくるのは少ないのです。

※犯罪白書より:H19年からH28年までの10年間の少年の家庭内暴力数は、H24より増加。H28の総計2,676件のうち中学生は1,277件、高校生は766件とこの二つの世代が、一番多く占めている。中でも暴力の対象は、母親が62%と最多をなし、あと家財道具、父親、兄弟姉妹、他の家族という順を成す。これは認知件数であり表面に出てこないものはどれほどあるかわかりません。この時期は、反抗期でもありますが。
これは、少年の家庭内暴力だけなので、外での、暴走行為・犯罪行為は又、別数字を示さねばなりません。


民法892条(推定相続人の廃除)

「遺留分を有する推定相続人が、被相続人に対して虐待をし、もしくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる」

及び・・・

同893条(遺言による推定相続人の廃除)

「被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行人は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生じる。」


※『推定相続人』=相続が発生する前の相続人の事を言い、相続発生後は「相続人」と言う。所以、894条は後に被相続人となる人が生前中に行うということであり、895条は死亡前までに書いた遺言書により、死亡後に行う手続きを言います。


があります。

このように、相続人(遺留分請求できるのは、推定相続人のみ)の1人に入れたくない人がいる時には、この手続きを行います。

遺言にもそのことを書くことができますが、それだけでは足りません。遺言書に書いた時は、相続が開始された後(被相続人の死亡後)、家庭裁判所に相続人廃除の手続きを取らねばなりません。

又逆に、後日取り消したい時には、いつでもその廃除の取り消しも出来ます。(同894条)

但し、取り消しの時には理由は不要ですが、廃除するには、廃除するに値する理由が必要です。一般家庭内で起こるどこにでもあるような問題ではダメです。


しかし・・・・

推定相続人の廃除の要件は厳しいので、生前における証拠を残すことが大切です。裁判で立証する為です。

<例>

・車購入時の保証人になったが、ほとんど本人は支払わす、親’(被相続人)が支払った。

・保証人にならなかったら、暴力を振るわれた。

・何度も警察に世話になるような(軽)犯罪を犯している。

・いつまでたっても、仕事に就かず、親の金を盗む。


などの事実を、証拠資料として書き残すこと。

その時、正確な年月日・内容(暴力などの事件名や医者での医療内容や領収書・購入品名・数量・金額・期日・支払先・貸金額と返済額や残金など)・支払人と言う名称と支払人(親など)の署名と押印・物品購入証や領収書が必要です。

結果として、遺留分金額を超えるとか、特別受益等に相当する事もあります。遺留分減殺請求時の反訴資料となります。

これはとても、必要十分な証拠となり得ます。

また、得てして、遺留分減殺請求裁判時には、原告側は、有りもしない寄与分を捏造したりします。(例>「毎年。〇〇万円を送金している一覧表」)それは、一夜漬けで作ったようなものを証拠として提示することもありますが、現実としてその証拠(送金の証拠など=現金では、いくら送っていると言っても証拠としては弱すぎます)が無い限りこれも同じく証拠たりえません。

兎にも角にも大事なのは、証拠」です。「誰が見てもはっきりとわかる証拠」です。


・「著しい非行」と認められるまで行かない時

また、暴力・暴言などでなくても、身勝手すぎる行動の積み重ねと言う子供もいます。親としても、当然その子どもには、酷い仕打ちを受けてきたと言う事もあるでしょう。これが「著しい非行」に当たるかもしれません。しかし、それが、家裁で認められず、遺留分の支払いが有る時(遺留分だけはしぶしぶでも支払わねばならない)は、後は、遺言で操作すだけとなります。(おかしな話でもありますが、ごく簡単に言えば、遺留分を少なくするためにも、遺産を出来るだけ残さない事とも言えます)
遺言に一言それを書き入れます


・単にこれほどでもないが、子どもに遺産分割の割合の差をつけたいだけの時は、その差をつける理由を遺言に入れるべきです。



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